くらげ
あたし くらげになったみたい
ふわふわして ゆらゆらして
力がぬけてるの
大事なものをなくしたのかしら
からだからなにかぬけていったのかしら
あたしは ふぬけのあたしをごまかすみたいに
食べたり 描いたり 読んだり
観たり 撮ったり 呟いたり
したけれど ついには力尽きて
ベッドにたおれこんだ
あたしのなかを いろんなものが
よぎったり 浮かんだり 唄ったり
歩いたり 話したり 訴えたり
するのだけど
くらげのあたしは つかむことができなくて
するり 指のすき間から抜けて 消えて
あれは 何かしら
何かとても
大切なものだったような気がするけれど
するり ゆるり ふわり ぽわり
何か あたしから ぬけては 寄り
つかまえられずに 逃がしてしまうものたち
それは 記憶のような 想いのような
願いのような 祈りのような
何か 誰か
くらげのあたしを守るもの
支えるもの 形づくるもの
夢の波間にただようあたしを
海の底へ沈めないようにしてくれる
何か大切な声。