夜は 眠りなさい と
あなたは言って クスリをくれた
眠っていれば 何も考えずに すむでしょう

私は
こくん と うなづいてみせた

けれど
あなたは 知らない

眠れば 夢をみます
眠れば 目が覚めます

しあわせな 夢も
おそろしい 夢も

独りで 目を覚ましたときには
寂しいものです

夢ではなかった と 安心する喜びを
全て夢であった と 安心する喜びを
得られることは なく

外で はしゃぐ 子供たちの声が
窓の向こうから 部屋へ入り込み
私を 現実に 呼び戻したとき

クスリの眠りから 覚めた私は
ぬいぐるみを 強く 抱きしめて
ただ 孤独のみを 感じ

何をするでもなく
独り 誰かを待つ 夕方

眠りたくないのです
夢を みたくないのです
目を 覚ましたくないのです

せめて
二度と目覚めないためのクスリを
あなたが くれたらよかったのに