屋上にて

「大体ね、僕が死んだからって何だっていうんだい?」

ここは眺めがいいな

「死んだら土に還るだけさ。」

空の青と雲の白が綺麗だ

「空に昇るなんて、誰が言ったのさ?」

フェンスの影が僕にかかっている

「空なんて在るんだか無いんだかわからないじゃないか。」

気分の良くなる快晴の日だ

「現実的に考えれば、死人は空でなくて土に居るんだよ。」

高い高い椅子に腰掛けているみたい

「人でも動物でも植物でもね、そうだろう?」

プラプラと動かす足の影も見えない

「分解されて土になるだけさ。」

遥か下の方は車が通ったり人が歩いたりしているなぁ

「僕は何か間違っているかい?」

下からの風が髪をなでた

「だからどうしてそのフェンスに囲まれたような場所へ戻らなくちゃいけないのさ。」

ここは本当に気分の良い場所だ

「危ないって何が危ないのさ?」

ああ 雲の形が変わったなぁ

「死なない生物なんていないんだよ?」